弓順(ボーイング順)・指づかい(フィンガリング)にはよく使われるルールがあります。もちろん例外も多数あるのですが、まずは定石となるルールを知っておくと自分で弓順や指づかいを決めることがやりやすくなるかと思います。非常に大雑把ですが、弓順と指づかいの大まかなルールは次のようなものでしょう。
弓順の大まかなルール
【ビートの来る音が下げ弓】
小節の中で、1拍目や3拍目などビートの来る音は原則的に下げ弓(ダウンボー)になります。逆にアウフタクトなど4拍目などからフレーズが始まる場合は上げ弓(アップボー)から弾き始めることが多々あります。3拍子など奇数の拍子で四分音符が連続する場合は1拍目がダウンに、2拍目と3拍目を両方アップにするなどして対処することが多々あります。また同じ意味で、アクセントの付く音はダウンで弾くことが多いと言えます。
【弓を弾く場所との兼ね合い】
直接弓順とは関係ないのですが、16分音符など細かい動きを弓を跳ねさせないで弾く場合は弓先の方で弾くことが多いと言えます。一方、弓を跳ねさせたい場合は比較的弓の元の方で弾くことが多いと言えます。上手く弾けるように少しずつ移動することもありますが、前後のつじつまを弓順を工夫することで合わせる場合がよくあります。
指づかいの大まかなルール
【進行しやすくなる指づかいで】
指づかいは原則的には次の音のことを考えて決めることが多いと言えます。すなわちフレーズが進行しやすい指づかいでということになります。「E線開放弦のミ」と「A線4の指のミ」など0と4の指が両方あり得る場合は、上りの音型では0を、下りの音型は4を使うことが多いと言えます。それは次の音への進行を意識した例と言えます。ただ、0には通常ヴィブラートがかからないので※、長い音の場合は上り音型でも0を使わず別の指を使うことが多いとは言えます。
【音色やフレーズを意識した指づかいで】
上記の事と関係しますが、指づかいは音色やフレーズと密接な関係があります。多少弾きにくくてもG線のハイポジションを使ってG線独特の音を使用することは多々あります。また、フレーズの途中で移弦はなるべく行わない暗黙のルールもあります。移弦をすると音色が変わってしまう事もあるためか、昔風の指づかいでは特に弦ごとの音色を重視したものが多く見られます。最近では音色よりも正確に弾くことのできる指づかいが採用されることも多いのですが、指づかいを決めるルールの一つと言って良いかと思います。
他には特に良い音色を必要とする場合は、良い音の出る指(一般的には2か3)で弾くことが多いとも言えます。押さえる指によってヴィブラートのかかりかたや音色が変わりますが、長い音を美しい音で響かせたい時は、その目的を達成できる指で弾くことが多いと言えます。
非常に大雑把なのですが、まずは上記のルールが音楽的もテクニック的にも重要と考えています。弓順や指づかいを決めるご参考になれば、また、そういう発想で楽譜の弓順や指づかいを確認してみて頂ければと思います。
次回からはよくあり得る状況にそって例を挙げながら弓順や指づかいを説明させて頂きたいと思います。
※オクターブ上の音を同時に押さえることでヴィブラートをかけることは可能ですが、G線開放弦のヴィブラート以外は使うことはほとんどありません。