2009年10月2日〜10月7日にかけて、イタリアのクレモナにヴァイオリンを見に行ってきました。何回かに分けて、そのレポートを書かせて頂きたいと思います。2日に成田発-ミラノ着、6日にミラノ発-成田着ですので、事実上10月3日〜5日の3日間についてのことです。
10月3日と4日にモンドムジカ2009(Mondomusica)を見に行ってきました。モンドムジカはイタリアのクレモナで毎年開催される、ヴァイオリン属の楽器を中心にした展示会です。世界中から製作家やお店が来て展示と、お店によっては販売をします。主に業者向けのイベントですが200以上ものブースが出ていて、イメージとしては東京の弦楽器フェアの巨大版という感じです。
モンドムジカ会場。CremonaFiereという展示場です。東京ビックサイトのようなものか。
中の様子。非常に広く210ものブースが並んでいます。
日本からも今回、日本ヴァイオリンさん、シャコンヌさん、白川総業さんが出展していました。白川総業さんは楽器の展示はありませんでしたが、シャコンヌさん、日本ヴァイオリンさんが楽器の展示を行っていました。両楽器店とも日本での展示会を拝見させて頂いているので、現地の楽器と直接比較することができたのは興味深いことでした。
日本ヴァイオリンさんのブース。
シャコンヌさんのブース。
クレモナはヴァイオリン製作が忘れられたような時期もありましたが、現在は大変盛んです。実際、クレモナの製作家の工房に立ち寄ったり、買いに出かけた方もおられるのではないでしょうか?現地に行ったらより良い楽器が安く購入できるのではないかと思えます。日本に入ってきている楽器は良くないもののような気がしたり、現地での楽器と違うのではないかと思ったりします。
Tarisioオークションに出品されるニコラ・アマティ(あまりにもTarisioのブースが混んでいたので、最後の最後で弾くことができました)やサルトリの弓、また海外の楽器店のリュポなどの名器から新作イタリーまで非常に多くの楽器を弾いてきました。その結果、現地で直接比較しても、シャコンヌさん、日本ヴァイオリンさんとも日本の楽器店は質の良い楽器を扱っていることが分かりました。
試奏するわたくし(SCROLLAVEZZAのブース)。世界中で同じ事をやっています(^^;
Elic Blot氏のブース。ストラディヴァリ。さすがに弾けず。
値段が付いていたのは弦などのアクセサリくらいでしたが、日本と値段に大差ない。大きな差があったのはバーゲンになっていたヴァイオリンのケースくらいでした(ケースはひとつ購入しました。国内で販売していないモデル)。
弾く人の音色も西洋人だからといって上手なわけではない。貧弱な音のひともいれば立派な音の人もいるし、音色は日本人と変わりませんでした。ただ、概して難しい曲で試奏をしていたことは興味深いことでした(難しい曲を使ってアピールしたがるのは日本人だけではない)。
何となく、「本場に行けば、イタリアに行けば良い楽器が見つかるのかな」という気持ちが私の中にもありましたが、それは幻想だったとハッキリ分かりました。中国の製作家の楽器にも素晴らしいものがありましたし、国に関係なく良いものもあれば悪いものもあると言えます。
期待していたのは、斬新な楽器が見られるのではないかと思っていたことです。カーボンのヴァイオリン(弓ではなく)が見たかったし、エレクトリックヴァイオリンも数多くあるのではないかと思っていました。
置物・彫刻として美しいヴァイオリンはありましたが・・・。
残念ながらそういった楽器はほとんどなく、裏と横板がカーボン製のエレクトリックヴァイオリン(アンプにつないでも、生音とほとんど同じ音がしていました。Michael Edingerというデンマークの業者→http://stringamp.com/)のもので、かなり気に入りました(Webには同じものは載っていません。使用用途が私にはないのでパス)。
Arcusの弓も日本で触るのと同じものでしたし、エレクトリックヴァイオリンにも目新しいものはありませんでした。変わった素材でできている楽器や変形楽器もありましたが、大して魅力はなく。
ローランドの電子パイプオルガンや足ペダル付きのピアノなどは興味深いものでした。
足ペダルに注目。足を押すとピアノの低音の音がします。
ローランドのオルガン。わたしはそれほど鍵盤楽器は弾けません。念のため。
軽食を食べられるところ。ヌガーなどクレモナ名物も売っていました。
ちょっと欲しかった作曲家の石膏像。楽譜などもありました。
モンドムジカは楽器のお祭り・祭典と書かれることがしばしばあります。確かにそれは正しいのですが、幕張メッセなどで行われるイベントと変わらない印象で、クレモナに到着しても「あれ?」という感じでした。
クレモナ駅前の風景。左の看板がモンドムジカの看板です。これだけ。
会場は街の中心から外れた近代的な展示場です。町中の古風な建物で行われるものではありません。会場までは無料シャトルバスが運行されていましたし、駅前に看板も出ていましたが、ちょっとイメージとの乖離がありました。
モンドムジカ会場行きのシャトルバスの時刻表。テープで貼ってあるだけでした。
確かに世界的かつ大規模な弦楽器フェアであることは間違いありません。けれども、基本的にはビジネスの場という印象を受けたし、必ずしも日本人が歓迎されている雰囲気ではないように感じました。
結論としては、行って良かった。日本で見るヴァイオリンと変わらないし、日本の楽器店は世界的に劣っているわけでないことが分かったのが最大の収穫でした。