子供の頃、楽譜に付属のレコードやCDを「聴きなさい」と言われてつまらないと思いながら聴いた経験のある方も多いはずです。そしてヴァイオリンを嫌いになってヴァイオリン音楽を聴くのも苦痛になり、ヴァイオリンを止めそしてクラシック音楽から離れてしまった方も多いでしょう。音楽自体を聴かなくなってしまったり、ポピュラー音楽に目覚めてその面白さに夢中になったという経験のある方もいらっしゃることでしょう。
その当時に「聴かされていた演奏」は必ずしも名演奏家の名演奏とは限りません。現在と違って名盤・名演奏に関する情報も一部の趣味人の間に限られていたし、レコードは高額で同じ曲目を聴き比べすることは余程のマニアに限られていました。名演奏の追求は大変に贅沢な事でした。
それから長い時間を経て、音源は無料同然のものになりました。過去の名演奏も音楽配信サービスや動画サイトで検索ひとつで簡単に聴けるものになりました。例えばハイフェッツ、グリュミオー、オイストラフ、あるいは、パールマン、クレーメル、ヴェンゲーロフ、ヒラリー・ハーン、ユリア・フィッシャーなどと検索してみると、当時つまらなく聴いた「よく知った曲」が全然別物に聴こえる演奏が見つかるかもしれません。
例えば
・ビバルディのアーモール:ヴィヴァルディの協奏曲集「調和の霊感(L'estro Armonico)」作品3の第6番です。レッスンで弾くのと別物で驚かれるかもしれません。
・バッハのドッペルコンチェルト:BWV1043で検索すると出てきます。多くの名演奏家が録音しています。
・ザイツやアッコーライ、リーディングの協奏曲:パールマンの演奏があります、
・ヴィタリのシャコンヌ:ハイフェッツの強烈な名演があります
等々
ヴァイオリンに再度触れることで関心が生まれてきたのであれば、これらをぜひ聴いてみて頂きたいと思います。子供の頃に「つまらなく聴かされた音楽」も別の輝きをもって接することができるかもしれません。そして過去のヴァイオリンに対する思いの清算が出来ることになるかもしれません。