世の中にはもったいない事がたくさんあります。苦労して身につけたスキルにもかかわらず放り出したままになっているのはもったいない事のひとつです。ヴァイオリンなどの習い事は放り出したままになることは多いものですし、わたしにもそういうことは少なからずあります。
放り出してしまうには理由があるものです。単に飽きっぽい性格の方はここでは問題にしません。熱意はあって、充分頑張って、でも、何らかの加減で気持ちが折れてしまうことや、機会が無くなってそのままそれっきりになってしまうこともあるものです。
ヴァイオリンをそこそこ弾けるまで練習し続けるのは大変なことで、「止めてしまいたい」と思いながら嫌々続けているケースや、耐えきれず結果として止めてしまったケースも多い事でしょう。
子供の場合は「親にやらされていた」ケースも少なくなく、苦みを伴った思いも多い事と思います。習い事は真剣であるほど「楽しい」「嬉しい」で済むことはあり得ないもの。親の期待や先生の熱意が強いほど嫌いになり、猛練習の結果、自分の中で大きな存在になっているほど憎悪の対象になっている場合もあるでしょう。切ない事です。
自分の中の存在の大きさと理不尽な思いとの葛藤になるかもしれません。でもそれも現在の自分を形作っている一部で、長い時間をかけて心の中でヴァイオリンと和解できているのであれば、せっかく身につけたスキルを放置しておくのはもったいない事だろうかと思います。また自分にとっての大きな存在ほど生涯を終える前に清算できた方が望ましいとも思います。
このシリーズでは長い間のお休みになってしまった場合の復元をテーマについて書かせて頂きたいと思います。長い間に傷んでしまった演奏技術を復元するための練習方法、気持ちの整理・修復や、楽器の整備、さらに先に進むため簡単な知識について書かせて頂きます。
次回以降、テーマ毎に書かせて頂きたいと思います。