「音感がないから」とおっしゃる方がよくいらっしゃいます。本当に音感のないひとは100人に2人いると言われますが、わたしはそういう方に出会ったことはありません。これまでの音楽経験が音程の良し悪しに影響するのは確かですが、「音感のないひと」はごくわずかで、多くの人には音感が備わっていると考えるべきです※。
まして、楽器を弾く上での必須条件のように言われる「絶対音感」は、ヴァイオリンを弾く上でそれほど大事なものではありません。絶対音感は単独の音を聴くだけで音名が判断できる能力のことですが、絶対音感がなくても音程良く弾くことはできます。必要なのは絶対音感ではなく「相対音感」です。
楽器を弾くときはその箇所の表情にふさわしい音程で弾くことになり、高音をより高めの音程に押さえるなど、あえて測定値とは違う「外れた音程」で弾くことはよくあります。大事なのは音楽のパーツとして心地よい響きになるかどうかであって、「ド」か「レ」か音名わかることでもなければ、測定して何ヘルツかでもありません。
表情にふさわしい音程をつくるには多くの音楽の経験が必要になります。その意味での「音感」は必要です。どうぞ、「半音上げたから長調になった、半音下げたから短調になった」、「高めだから低めだから音程が悪い」と単純に思わず、出したい響きなるようにと追求して頂きたいと思います。
※音感が本当になければ表情のある話し方すらまともにはできないはずです。また、わたし自身は絶対音感がありますが、ヴァイオリンを弾く上で便利に思ったことはほとんどありません。