「クラシック音楽は堅苦しくて」という話はもっともです。クラシック音楽は、外国の長編小説のように長くて、回りくどいものが多くあります。取っつきにくい曲が多いことは否めません。
こういう場合、一般的にはヴァイオリン小品集をすすめる場合が多いのですが、ここでは、あえてクラシック音楽を離れ、ノン・クラシックの中でおすすめできるヴァイオリンのCDをご紹介することにします。
ヴァイオリンはクラシックのイメージが強いのですが、ジャズなどでもよく使われる楽器ですし、クラシックの音楽家がポピュラーを弾くことも、近年では少なくありません。
ノン・クラシックのヴァイオリンCDは、いまひとつのものが少なくない中で、特におすすめできるものをご紹介いたします。結果的に、超一流演奏家のものだけになってしまいました。
ステファン・グラッペリ One on One, With McCoy Tyner |
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ステファン・グラッペリはジャズヴァイオリンで最も有名な人と言って良いでしょう。ギターのジャンゴ・ラインハルトとの関係でご存じの方もいらっしゃるかも知れません。
これこそ、「温かい」ヴァイオリンと言えます。クラシックのヴァイオリニストには出せない、柔らかく温かい音色と、人間の声そのもののような語り口。
改めてグラッペリのヴァイオリンを聴くと、こんなにヴァイオリンは親しげに語りかけてくれるものなのかと気づかされます。
グラッペリはメニューインやその他多くのクラシックの演奏家と共演していて、そういったCDも数多くあります。
ですが、クラシック音楽家との演奏よりも、このマッコイ・タイナー(ジャズ・ピアニストで大変有名な人です)との演奏が生き生きしていておすすめできます。
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→ステファン・グラッペリ One on One
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イツァーク・パールマン シネマ・セレナーデ |
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映画音楽を弾いたヴァイオリンのCDは数多くありますが、その中でもこのCDほど美しい音のものを私は知りません。
イツァーク・パールマンは、クラシック音楽で大変に有名な演奏家ですが、昔からポピュラーのCDも出しています。
大変に美しい音と、高度なテクニック、歌い回しの心地よさ、そして何とも楽しそうに演奏することが特徴の演奏家で、それが良い形で現れたCDと思います。
クラシックに限らず、気持ちいい音楽が聴かせてもらえることが演奏家の命と私は思っています。ジャンルが違っても、「気持ちいい」音楽を聴かせてくれるのは、パールマンの懐の深さなのでしょう。
素直に「ええ音やなあ」「ええメロディやなあ」と思えるCDです。
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→パールマン シネマ・セレナーデ
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ギドン・クレーメル アストル・ピアソラ タンゴ・バレー(TANGO BALLET) |
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タンゴです。社交ダンスでよく使われるタンゴです。作曲者のピアソラは「タンゴの破壊者」と言われるほど、タンゴに革命を起こした人物です。少し前ですが、チェロのヨーヨー・マがブームを巻き起こしたことで、ご存じの方も多いかも知れません。
演奏しているギドン・クレーメルは、クラシックの世界では大変有名な人で、一風変わった演奏やあまり演奏されない曲を弾くことでも有名です。
クレーメルは、線の細い音で、しかし、美音の演奏家です。これが、ピアソラの音楽の哀感と大変によくマッチし、演奏から薄暗い、紫煙がただよう風景が見えてきます。
クレーメルの弾くピアソラは何枚か出ていますが、このCDをおすすめします。このCDは特に躍動感や、生命を感じさせます。演奏家は音楽は生命を吹き込む仕事です。それが尊いのです。
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→クレーメル アストル・ピアソラ タンゴ・バレー
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