木くぎの形や位置が製作者を判断する手がかりになる場合があります。木くぎとは、裏板や表板の上下パフリング付近に点のように丸く見られる木片です。表板側はテールピースがあるため、あまり見られませんが、裏板はちょっと注意してみればはっきりわかります。
木くぎは、製作時に板を仮止めした痕跡と言われており、製作スタイルによって、あるいは、流派によって同じような特徴が認められることがあります。
例えば、ニコラ・アマティやストラディヴァリなど一部のクレモナの楽器は、木くぎが半分パフリングで隠れて半月型に見える場合がよくあります(もちろん、ストラディヴァリでもそうなっていない楽器もあります)。J.B.グァダニーニのように木くぎが大きい場合など大きさもさまざまですし、木くぎの位置も、板の中央に打ってある楽器・ずれている楽器、など製作家によっていろんな特徴が見られます。
よくできた名器のレプリカは、この木くぎの特徴をたいてい押さえてあります(ヴィヨームやヴォラー・ブラザーズ、また、現代のレプリカなど)。そのため、半月の木くぎだからと言って本物とは言えません。また、後世の修理によって木くぎが無くなっている場合などもありますので、木くぎがないからと言って、贋作と言い切ることもできません。
ですが、製作スタイルが残った部分ですので、製作家の特徴が出る部分と言って差し支えないと思います。古い楽器が見られる機会には、木くぎに注目して、製作家による特徴を見てみてはいかがでしょうか?
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