過去の研究成果を調べて覚える事は独学でも簡単にできます。現代では書籍は豊富ですしウェブサイトが無数に存在し情報に溢れています。でも、注意をしないといけないのは目的を見誤らないことです。情報の収集が目的ではなく、得た情報を使って何をどうするか、すなわち得た情報を整理・分析し重要性を割り出した上で進むべき方向性を導き出すことが目的のはずです。
先生に習っているか否かにかかわらず、過去の研究成果から意義あることにするには情報の山から一般法則を導き出せるかどうかにかかっています。またその点こそが先生の大事な役割でもあります。情報の価値の重み付けや情報源の取捨選択は先生の大事な役割で、単なる情報の横流しでは先生の役割を果たしません。知っていることを何でもかんでも生徒に伝える事が先生の役割ではないのです。
ヴァイオリン演奏自体については、あまりにも情報が錯綜していて適切な方向性を独学で把握するのは相当に困難だろうかなと思います。ただ、ヴァイオリンの演奏自体の独学よりも演奏以前の部分で独学すべき内容がいくつかあります。ヴァイオリンや音楽の常識、更には文化一般や物理一般に相当する部分です。
楽譜の読み方は独学が可能ですし音楽をやる上で広く生かせる能力です。中学校の音楽の教科書レベルで充分ですので、楽譜の最低限のルール、ごく簡単な音楽史を知って頂きたいと思います。それから名演奏家と言われる人の音源や映像を多く見聞きして欲しいし、ヴァイオリンの歴史や構造についても大まかに知っておくと演奏にも役立ちます。更には大まかに17世紀以降のヨーロッパの歴史や西洋美術を知ること、機会ある時に科学館などで物理(特に音響物理)の展示を見て欲しいと思います。数式ではなく音の動きを視覚的なイメージで捉えられることはヴァイオリンを弾く上でも役に立ちます。
ぜひ独学でこそ広い視野で文化一般に接して頂きたいと思います。この基礎的な素養はヴァイオリンを弾くにも音楽をするにもとても大切ですし、ヴァイオリンだけでなく人柄を高める上でも役に立つはずです。
独学でやるべき事のご参考にして頂ければ幸いです。