ヴァイオリン教本やヴァイオリン用として販売されている楽譜には多くの場合、弓順(ボーイング)や指づかい(フィンガリング)の指定が書かれています。けれども、オーケストラなどの楽譜は弓順や指使いの指定が書かれていないものが通常です。
オーケストラで演奏する時にはコンサートマスターなどパートリーダーが弓順を決めます。ですが、指づかいは基本的には各自に任されることが多いかと思います。また、パートリーダーになったり、各パートがひとりずつの室内楽などを弾く時には弓順も自分で決める必要が出てきます。
弓順や指づかいは弾ければ何でも良さそうなものですが、適切な弓順や指づかいでなければ弾くことすら不可能なパッセージが出てくることがあります。また、音楽としてより効果的な表現をするためには、求める音色やフレーズのつなぎ方を優先して、通常の感覚では弾きにくい弓順や指づかいで弾く場面もあります。
長いスラーは一般的には弾きにくいものですが、あえて長いスラーで弾いた方がうまく弾くことが出来る場合もあります。通常のスピッカートではなく、あえてアップを連続させたスピッカートの方が効果的な場合もあります。
一般的に苦手意識の強い、セカンドポジションなどの偶数ポジションを使った方が、弾きやすくなる時もありますし、しばしば極度に嫌われる開放弦を使った方が無理なく弾くことができる場合もあります。そして、G線の太い音が必要とされるため、あえてG線の高いポジションで弾く場合もあります。
次回以降、弓順と弓づかいの基本的なルールとアイディアをお示ししていきたいと思います。