ヴァイオリンの世界では300年ほど前の古い楽器が現在でも使用されます。こういった古い名器はオールドと呼ばれますが、オールドの楽器には独特の音色と弾き心地があり、多くのヴァイオリニストが「欲しい!」と思うものです。
有名な楽器になるほど出てくるのが「だました、だまされた」の真贋騒動です。オールドに限らず、モダン・イタリー(19世紀〜20世紀半ば頃にイタリアで作られた名器)やコンテンポラリー(存命の製作家による名器)にもニセモノは数多く出回っており、ニセモノをつかまされる可能性は誰にでもあります。
高価なヴァイオリンが欲しくなるような腕前になってきたり、先生になって生徒のヴァイオリンを選ぶようなことが出てきたら、楽器についての知識や骨董の知識は不可欠です。知識を持つことでトラブルの可能性を減らせますし、ましてや自分だけがトラブルにあうのならともかく、他人の楽器を選ぶ際には責任感が必要です。
また、長い年月を生き抜いてきた楽器をあまりにも粗末に扱う方もいます。「多くの人が守って伝えてきた楽器を次の世代に引き継ぐ」ことも、古美術を持つ者が持つべき義務です。そのためにも、骨董についての知識も必要でしょう。
そこで、今回は骨董や古美術について分かりやすく読める書籍を2冊、ちょっと難しい文章ですが、骨董の真髄が記されている書籍を1冊ご紹介します。
中島 誠之助 「ニセモノ師たち」 講談社文庫 |
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「開運!なんでも鑑定団」の「いい仕事していますね」の人の著書です。
骨董の世界はどういう世界かを知るのによい本と思います。「骨董の鑑定とは」、「ニセモノとは」ということが簡潔に分かりやすく書いてあるし、だまされる手口、だまされやすい人についても記してあります。
若干の相違点はあるものの、書いてあることは、ほとんどヴァイオリンの世界でも同じです。骨董的なヴァイオリンを購入するときに、こういった知識や意識があるだけで、得られる結果がかなり違うと思います。
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→中島 誠之助 「ニセモノ師たち」
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トマス・ホーヴィング 「にせもの美術史」 朝日文庫 |
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こちらはメトロポリタン美術館のキュレーターが書いたニセモノについての本です。漫画の「ギャラリーフェイク」みたいですが、それ以上にお勧めです。
古美術を鑑定するときに気にとめるべき条件、贋作事件・贋作の事例など、こちらも骨董・古美術を見るには大事な知識が記されています。
特に最初の方の、古美術を見る際の11箇条は、オールドヴァイオリンを見る際にも重要と思いますので、知っておくとよいのではないでしょうか。
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→ホーヴィング 「にせもの美術史」
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小林秀雄 「真贋」(「モオツァルト・無常という事」に含まれる) 新潮文庫 |
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小林秀雄の「無常ということ」を高校の国語で読んだという方もいらっしゃるかと思います。
小林秀雄には骨董趣味がありました。この文章は彼のニセモノにまつわる経験を通じて「ニセモノとは、骨董とは、美術とは」について記したものです。
例によって小林秀雄の文章は易しくありませんが、この短い文章以上に的確に書かれたものをわたしは知りません。「美について」も考えさせる面があり、音楽を演奏するという点においても読む価値はあると思います。
この文庫に限らず、「真贋」を収めた書籍は大抵の図書館にもありますので、ぜひ探して読んでみてください。
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→小林秀雄 「真贋」
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