ヴァイオリンを紫外線で見ると、普通の可視光で見るときとはかなり違う見え方がします。修復の際の刷毛跡がはっきり見えたり、コーティングのニスが緑に見えたり、補修のニスが強いオレンジに見えたり、ニスの細かなひび割れが見えたりと、可視光では見えなかったところが見えるようになります。
当然、いろんなニスが塗られていれば「修復歴が多い」と判断することができます。また、ニスは製作家の特徴が出る部分でもありますので、ニスを紫外線で見た時の色が楽器鑑定の手がかりのひとつにされることがあります。
特に有名なのはストラディヴァリのニスです。紫外線を当てるとオレンジ色のような特徴ある色に見えると言われます。このことは、The Stradのような雑誌にもしばしば記されていて、逆に、状態を良く見せかけるため「紫外線を当てるとオレンジ色に反射するニス」をわざわざ塗ることすらある、と言われるほど有名な特徴です。
実際、わたし自身の経験でも、ストラディヴァリを紫外線で見ると白とオレンジの混ざったような色で非常に細かくひび割れして見えます。ただ、300年も経てば製作時のニスは大半が剥離してしまうものなのでしょう。全面がそのような色に見えることは無く、裏板の一部にそういう部分が見られるようです。
紫外線でオレンジ色に見えるからストラディヴァリ」というわけには必ずしもいきませんが、楽器鑑定の手がかりのひとつにはなると言えます。
※通常のブラックライトでは出力が小さくてはっきりわかりません。わたしは高出力のUV-LEDを使った懐中電灯タイプの紫外線ランプを使っています。
※写真の楽器はストラディヴァリではありません。念のため。
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