下記ラベルの入ったヴァイオリンは非常に多くあります。
Antonius Stradivarius Cremonensis Faciebat Anno 17xx +AS(「クレモナのアントニオ・ストラディヴァリ作 17XX年」の意味。ラテン語。ラベルの写真を見ると、Stradi"u"ariusであったり、Cremonen"f"isと読めますが、上記のように読みます)
この楽器が本当にストラディヴァリが作った楽器なのか、少なからず興味を持つのではないでしょうか。また、お持ちの楽器にこのラベルが入っていれば、「もしかしたら」と思うのが人情でしょう。
これまで「蔵から出たヴァイオリンにストラディヴァリのラベルが入っているが本物かどうか」、という話題が出るごとに「家が資産家だったか」「伝説が残されているか」などの間接的な条件を挙げて、否定されることが多かったようです。もちろん、「ex.〜」というようなストラドは昔から高額なため、間接的条件による判断も無意味ではありません。
ですが、実際に楽器を見て判断できればもっと良いのではと思います。骨董は「来歴」「鑑定書」「伝説」など間接的条件で判断するのは危険で、「そのもの」に答を求めるべきです。そして「そのもの」を見るヒントになればと思ってこのシリーズを始める次第です。
わたし自身手にとって観察したストラディヴァリは"ex.〜"も含め20本程度ですので、もちろん鑑定なんかはできません。従って、比較的最近の専門書での説を紹介しながら実際の感触も交えて何回かに分けてお話ししたいと思います。
今回はまず、アントニオ・ストラデイヴァリの基本情報をお話しします。
名前はアントニオ・ストラディヴァリ。出身地はイタリアのクレモナかクレモナ周辺。生年は1644年頃没年は1737年(ヴァイオリンの製作は1666年頃〜1737年)。製作した楽器の本数は1000本近くか?現存は650本程度。師匠はニコロ・アマティとされるが製作上の違いも見られる。ストラディヴァリの前職は木製品の彫刻職人とも考えられている。
意外と基本情報からして不明点だらけなのがわかります。また、71年間の製作期間に1000本程度と驚異的なスピードで製作したこともわかります(14本/年。現代の製作家でも12本/年程度)。当然ひとりで製作していないし、バカ丁寧な仕事でもないことが予想できます。このあたりが楽器を素直に見るために重要であったりします。
次回以降、詳しくお話ししていくことにしましょう。
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