オールドの名器を扱うためには、楽器店に真贋を見分ける鑑定眼が必要です※1。鑑定眼を養うためには、実物を自由に見て触ることが一番ですが、さすがに楽器店でもまとめて50本のストラディヴァリを自由に触る機会はまずありません。そこで書籍などの資料に頼る必要が出てきます。
きちんとした楽器店ほど多くの専門書を持っている傾向があるようです。楽器・弓の図鑑や辞典、修理方法を記した書籍、ヴァイオリン製作者についての書籍、ヴァイオリンの展覧会の資料、オークションカタログなどが楽器店にとっての主要な資料と言えましょう。これらは大半が洋書で、かつ、希少な本ですので、楽器店が自分で外国から取り寄せることが多いようです。
専門書は数万円程度と高額なものが多く、楽器店としても負担は大きいはずです。直接収益を生むわけではないし、多くのお客さんは店員に言われたままを信じるお客さんでしょう。従って、資料へ投資するか否かは、「その楽器店の考え方・良心」を垣間見する材料に成り得ます。
また、専門書によっては"Subscriber(予約購入者)"のリストが載っている場合もあります。「内容を見ないでも、楽器店として必要な資料だから購入しておく」という意志の現れになり、楽器・鑑定に対する熱意をあらわすと言っても良いかと思います。
正直言って、コンビニやスーパー、ネットオークションなど、商品を見る目や知識がなくても商売ができる時代です。ですが、少なくとも私は膨大な知識や鑑定眼を持った店員を信用するし、そういう店員が勧める商品やサービスを購入したいと思います。それが「信頼」ですし、「買い物」です。
知識・鑑定眼の手がかりとなるのが資料です。お店が持っている資料の質と量は、楽器店の善し悪しを見分ける材料になりうると言えます※3。
※1 骨董品はお店の信用を含めて買う商品ですので、お店が客より知らないのでは話になりません。
※2 これらの資料は、必ずしも店頭にあるわけではありませんが、お店に行った時にはぜひ注意して見てみてください。
※3 Amati Booksで出ているような本が主要なヴァイオリンの専門書です。
→ヴァイオリン専門書籍の書店
←前の記事「良い楽器を知っていること-楽器店の選び方4」を読む
→次の記事「店頭の雰囲気はお店・経営者の実体 - 楽器店の選び方6」を読む
→ 一覧ページに戻る → トップページに戻る
|