教本の選択は指導者に任されることが多いようです。教本の選択も教える側の技量が出る部分で、どんな教本をどのように使うかで上達の具合が大きく変わります。
「篠崎バイオリン教本」、「新しいバイオリン教本」、「鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集」が昔からよく使われています。また、ヤマハの大人向け教室の教本をお持ち下さる方も最近は多くなっています。
どれが良くて、どれがダメということではなく、いずれにも良さも欠点もあります。ただ、教本は目的に沿って選ぶべきで、子供向けと大人向けで教本は変えるべきであるし、レッスンの方向性(楽しく進めるか、こだわって進めるか)でも教本は変えるべきです。
残念ながら「先生自身がその教本で習ったから」という理由で何となく無目的に教本が選ばれてしまうことが多いようです。各々の教本には次のような特徴があることを指導者はわかっていて、目的に見合った教本を選ばないといけないと思います。
【篠崎バイオリン教本】:→こんな教本
昭和18年か19年の発行と思われ※。フィンガリング、ボーイングも含め各所に古めかしさを感じる。ただ、カイザーの短縮版を含んでいるのは大きなメリット。また、合奏が重視されているのも特徴。
【新しいバイオリン教本】:→こんな教本
昭和39年の発行でその当時の名演奏家の弾き方に近い弓の持ち方や姿勢が特徴。音階や弓の練習を多く含んでおり、技術的な練習をガリガリやるスパルタ系教本。後ろの方の巻はかなり難しい。毎週定期的に子供に、あるいは、定期的にそれなりに弾ける方に教えるのであれば非常によい教本。
【鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集】:→こんな教本
最近(1巻で1988年)大改訂され大幅にフィンガリングやフレージングが変わった。弓の持ち方や左手の押さえ方、CDの弾き方に意見の相違はあるが、記述内容や曲の並びなど優れる。特に初歩的な巻はしつこくボーイング練習する素材として良い教本。また「子供っぽい曲」が比較的少ないのも特徴。
こういった特徴を把握した上で、目的にあった教本を選ぶのが教師の大事な仕事になります※2。
※1 現在の版は改訂版となっていますが、旧版との内容面での変化はほとんど見られないようです。
※2 うちは音色にはこだわりますので、ボーイングをしっかりさせる目的で初歩の方には「鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集」を推奨し、抜粋して使用することが多いのですが、「鈴木〜」に限定しているわけではなく、持ってきて下さった教本を使うことも多いです。
←前の記事「技術の横流しでは×:ヴァイオリン教師という仕事5」を読む
→次の記事「出張&講師宅レッスン:ヴァイオリン教師という仕事7」を読む
→ 一覧ページに戻る → トップページに戻る
|