ヴァイオリンの世界では大人になってからでは遅いといったムードがあります。先回お示ししたように、プロになるには技術面以外の理由で難しいと思いますが、技術面でプロに遜色ない程度になることは大人からでも可能とわたしは考えます。
ただ、実際にうまくいかないケースも多く、「大人からでは遅いという理由」について考えてみたいと思います。
【骨格ができる前じゃないと遅い】
根拠のないとんでもない話です。ヴァイオリンに特殊な骨格が必要なら1歳でも遅い。子供から始めていても、小柄な方なら弓の先は届きにくいしファーストポジションのG線は遠く感じるもので、子供から始めているからと言って楽なわけではありません。小柄な方なら胴体の長さが350mm程度の小型の楽器を使えば済む問題ですし(7/8は数が少なく、むしろ348mm〜352mm程度のフルサイズの方が多く見かけます)、弓先まで必ずしも使う必要はありません。
【練習時間が取れない、毎日できない】
上達には毎日の練習が望ましいし、練習時間も多い方が有利な面があります。大人にとって練習時間の確保は自分自身の問題で、「練習できない」と言い訳して上達するわけがありません。わたし自身、会社員(SEでNTTドコモのシステムを作っていました)だった頃は朝5時から7時まで消音器を使用して練習していました。朝は比較的融通が利くはずです。
【レッスンに通えない・通いたくない】
必ずしもレッスンに通う必要はないと思いますが、根本的な思い違いを避けるためには、レッスンを受けることが効率的な場合があります。ギターやピアノと違って、ヴァイオリンは身体の動きがそのまま連続音になるため、誤解が目立ちやすい面はあります。
子供の場合は、週に1度のレッスンが多いようです。毎週なら手戻りがほとんど起こらず理想的ですが、大人の場合はレッスンに通うことが難しい場合もあるし、他にもやることがあるはずでしょう。初めての頃はできれば毎週、しばらく経ったら隔週、さらにしばらくしたら月に1度程度で手戻りはそれほど起こらないと思います。
【練習課題が単調でつまらない・ただ進むだけ】
これは確かにあります。「篠崎バイオリン教本」や「新しいバイオリン教本」は子供向けにできていて、子供が飽きないように次々進むようにできています。これは大人向きではないし、不毛に思える時間を使うことになります。じっくり数ヶ月かけて取り組む曲と基礎技術をしっかりさせる課題とを組み合わせるのが望ましいとわたしは考えています。
【やりたい技術を教えてもらえない】
ヴィブラートやスピッカートなど「左手or右手がしっかりしたら」と教えてもらえない場合があります。子供向けの場合は身体で覚えさせる必要があるため、順を追った訓練が大切とわたしも思います。ですが、大人の場合は論理性や理解力があるため、早めに多くの技術に触れるようにした方が良いとわたしは考えています。
大人と子供で同じ方法で教えられるわけではありません。子供向けの方法では「大人には不可能」でしょう。大人には大人に合った教え方をするべきとわたしは考えています。
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