「もっと良いヴァイオリンを買いなさい」「弓をアップグレードするべきだ」と先生に言われ、お子様の楽器を購入することになった方、そうやって子供の頃に楽器を購入した方もいらっしゃると思います。わたし自身もそうでしたし、周りの人も同様でした。
ところが、高額な楽器の購入を生徒に強要する指導者について頻繁に聞くし、何人かの「ヴァイオリンがわかる!」の読者の方からメールで相談を受けたこともあります。出せる資金が無いからと先生に理解を求めても「買いなさい」の一本槍でどうしたものか、という内容で、ほぼ間違いなく指導者が楽器店からのリベートを期待したものです。
「良い楽器を使えば上達が速くなる」「コンクールや受験、演奏会で有利になる」という面は実際あり、先生の良心から生徒に楽器購入を勧めることはあります。才能ある生徒ほど、上達を加速するためには、楽器や弓から学べる要素は多いのです。
ですが、これは「よろしければ」というレベルで、無理強いするものではありません。それを楽器店からのリベート目的に「500万円のヴァイオリン、100万円の弓」→「1,000万円のヴァイオリン、500万円の弓」と次々と金額を引き上げて、高額な楽器を買わせる悪徳教師が少なからずいるようです。
「先生が生徒の楽器選びに口を出す」というのは、ヴァイオリンの指導者も、良い楽器も、情報も少なかった頃にできた習慣です。ですが、今や指導者にそんな横暴を働く権利も力もないと言えます。
かつてと違い、音大を出た人は山ほどいるし、音大出より上手なアマチュアも多くいます。都市圏にはヴァイオリンの教師だっていくらでもいるし、今では日本は世界一良い楽器がそろっている国です。そして、その反面、クラシック音楽の社会的価値は地盤沈下して、コンサートでは集客に苦労し招待客だらけ、音大も指導者も生徒集めに苦労している時代です。
傾き続けているヴァイオリン界の一角を象徴する「先生から楽器購入を強要される」ことについて、次回以降詳しくお話ししていくことにします。
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