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長期にわたる変化:ヴァイオリンの経年変化と音の変化4

ヴァイオリンは100年単位で使われ続けられることもよくあります。300年程度昔の楽器は平気で現役で使われているのがヴァイオリンの世界です。

長い長い間には弦のテンションで楽器は変形します。表板のE線側が陥没したり、全体が特定の方向にねじれている楽器が多く見られます。E線とG線でテンションの差があることと、E線側に魂柱がありG線側にはバスバーがありという非対称な構造のため、長年テンションをかけられてきたオールド楽器には共通する変形が見られるのでしょう。また、長い間には乾燥や事故によって板が割れたり、虫食いも生じたりもします

経年による変形は修正し破損は修理しながら楽器として使えるものにしますが、修理をすると物理特性が変わります。当然、音も変化します。例えば、新作楽器の表板を事故によって割ってしまって、それを修正した結果オールド楽器に似た音になったケースを経験したことがあります。割れや割れの修理もオールド楽器の音を作る要因になり得るのだろうと思われます。

さらに、長い年月の間に木材は「枯れて」いきます。次第にカサカサの枯れ木のようになって行くようです。これは単純に水分が抜けて「乾燥した」というのではなく、化学変化のようです。

材料が「枯れる」と金属的な音が加わるように思えます。材料が硬くなるためなのか高い周波数成分の音が増えるようで、シャリシャリした音が入ってくるように思えます。良く言えば「ニュアンスを感じさせる味のある枯れた音」、悪く言えば「しゃがれ声」ということになります。

古い楽器が必ずしも良いわけではありません。元々低音の出ていない楽器だと、甲高いだけの音になってしまいます。あまり良くない古い楽器はカシャカシャ、パシャパシャした音に聞こえることがよくあります。

長期にわたる経年変化は確かにあるようです。ですが、それが必ずしも好ましい事情によるものとは限らないし、必ずしも良い結果になるわけではないことは留意しておく必要があります。健康状態の良い楽器よりも、むしろ割れの多い不健康な楽器の方が「オールドのような音」が出ていたりすることがあるのです。

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