ヴァイオリンは使えば使うだけ減ります。
当たり前のようですが、案外見過ごされていることではないでしょうか?「弾き込むことで音が良くなる」「経年変化が重要」などと言われることの方が多いため、「使えば減る」と意識している方は多くないと思います。
多くの場合、ヴァイオリンは演奏するために作られ、演奏するために購入されるものです。例外はありますが、古い楽器ほど長い時間弾かれていることが多いし、良い楽器ほど気に入られて大事にされながらも使用頻度が高いと考えられます。そして、使用時に擦れる部分は使用した分だけ摩耗します。
「使用することで減る」という見方は、古いヴァイオリンの鑑定やコンディションを知る上で重要なことです。多く弾かれた楽器ほど、体や手で触る部分が減るし、減り過ぎたら修復されるものです。また、多く弾かれた楽器ほどアクシデント歴も多いはずで、傷や修理・修復も多いし、修理・修復や調整を行うたびに摩耗する箇所もあります。
減り方は材質によっても異なります。柔らかい材質を使っていれば減りやすいし、硬い材質なら減りにくい。材質も含め、減り方に矛盾が生じていないかどうかも、楽器の真贋を判断する要素になり得ます。
では、具体的にどんな部分が減るのでしょうか?
次回以降、詳しくお話させていただきます。まずは、古い楽器の写真を見ながら、演奏する時にどの部分が体と触れるか、普段の使用でどこが擦れるか、修理や調整の時にどの部分が擦られるかを、考えてみてください。
比較的減り方が分かりやすい写真にリンクを張っておきます。
比較的多く使用されていると見えるヴァイオリン(グァルネリ・デル・ジェス)
→http://www.tarisio.com/web/archives/public/21905.php
それほど使用されていないと見えるヴァイオリン(ストラディヴァリ)
→http://www.usd.edu/smm/Violins/Stradivari3598/3598StradViolin.html