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弾かないでヴァイオリンの良し悪しを知る方法をお話ししましたが、もちろん弾いた方が違いがはっきり分かります。少しでも音が出せるのであれば、積極的に弾いてみるとよいと思います。
試奏のやり方が適切でないとむしろヴァイオリンの良し悪しの判断を誤ってしまうことも少なくありません。自動車の試乗でむやみに乱暴な運転をしたところで車の良し悪しはわからないのに近いと言えます。試奏のヒントをいくつか書かせていただこうと思います。
【できるだけ単純なパターンで】
難曲、超絶技巧曲で試奏する方を見かけますが、単純なパターンや音階・アルペジオ・簡単な曲の方が、楽器による差が正しくわかります。例えばカイザーの1番、クロイツェルの2番などは楽器による差が大きく出ます。
【力は最小限に】
良い楽器ほど、軽い力で弾いた方がよく響く傾向にあります。音量を出そうとし過ぎず、弓は強く押しつけ過ぎず速すぎず。楽器の様子を伺いながら、運弓の位置や速さを微調整すると力を入れないでもよく鳴るポイントが見つかることがあります。
【遠くに響く音を聴く】
楽器の良し悪しは耳元の音ではなく客観的に聞こえる音の方が大きな差が出ます。目の前の楽器に集中しすぎず、会場の壁や天井から返ってくる音を聴こうとすると、良し悪しが分かりやすい場合があります。※会場の響きはある程度会場が騒然としていても分かるものです。
【他人が弾く音を聴く】
楽器の違いは弾いている人自身よりも、客観的に聴く方がよくわかる場合もあります。他人が弾く音をぜひ聴いてみるとよいかと思います。
試奏で自己主張しようとすると判断を誤ります※。あくまでも、楽器の音を聴く、それも近視眼にならず広い視野で聴くようにするとよいかと思います。良い音の楽器を知る手がかりにして頂ければと思います。
※よく試奏に使われるブルッフの協奏曲は、わたしにはちょっと楽器の良し悪しが分かりにくく感じます。