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曲の年代と演奏環境のリアリティある景色〜様式・解釈2

誰にとっても生きた時代から逃れることはできません。例えば1700年台と1800年台ではフランス革命を挟んでいるため、作曲家への依頼主も対象とする聴き手も異なっています。ヴァイオリンや弓の構造も概ねフランス革命を境に大きく変化しています。

昔は大変限られたカスタムオーダーものでした。作曲家は聴き手(依頼主)の嗜好や立場を知っていなければいけませんでした。そして、作曲家自身や身近な演奏家が演奏するため演奏の技量を充分に理解していましたし、ヴァイオリンなど楽器のことを作曲家がよく理解していた上で作られました。音楽は権力のアピール。理解あるパトロンの元ならふんだんにコストもかけられたことでしょう※。

ところがフランス革命で聴き手やパトロンが変わり音楽家も収入源が変化しました。「音楽をよく理解する教養人」から「直接面識のない大衆」へ聴衆が変わり、作曲家が自分自身で弾かない楽器の曲を作り、オーダーメイドではなくレディメイドになり、「貧しい音楽家」の話も増え、と産業の大衆化と同様の道を進んでいきます。

演奏する上で、大雑把にでもその点を理解していないと、過剰な解釈をしたり過度に難しく考えてしまうことになります。特に日本では教養主義の時代を挟んでいますので、さほどでもない音楽も過度に有り難がってしまいがちです。

演奏する曲の年代とその時代のリアリティを持った風景。近年このことが重視されるようになっていますし、これをある程度知ろうとするだけでも適切な解釈に近づくだろうと思います。

※例えば、バロックのヴァイオリン音楽は概して弾きやすく、それでいて効果的な響きをするように作られています。弾きやすさは毎日のように変わる大量の曲目をこなせるための工夫でしょうし、効果的な響きは作曲家がヴァイオリンの特性への理解があったためでしょう。教養あるパトロンが好むスタイルの作品を作って満足させる必要もあったことでしょう。

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