オールド弓が存在するように弓も長期的に使用することができます。ですが、不適切に扱えば折れてしまうこともあるでしょうし、オネジ(スクリュー)も無理に回せばオネジだけでなく時にはフロッグ(毛箱)も壊れてしまいます。だからといって特別な扱いが必要なのではなく、常識的な観点で壊れやすいものとして扱うことで大きなトラブルを避けることができるはずです。
弓はスティックが命で、しかも基本的にはスティックは修理が利きません※1。特にヘッド付近は細くなっているため破損しやすく、破損したら致命傷になる部分です。もちろん落とすべきではないのですが、落ちる時にオネジ側から落ちるのであれば、致命的な破損を避けることができます。
そのため弓を持つ時はヘッド側を上にするべきです。名演奏家がヘッド側を下に向けて持っている映像もありますが、破損を避けるためには好ましいことではありません。特に他人に手渡す時は落とす可能性が高くなりますので、必ずヘッドを上にして確実に渡したことを確認して渡します。
ヘッド側を下にして持つのは好ましくない
拍子を取るために弓で何かを叩いたり、振り回したりするのは問題外として※2、指し棒にするのも避けるべきです。弓を指し棒にするメリットは何もありませんし、時には横柄な態度にも見られかねません。指し示す必要がある時は、弓を左手に持ち替えて、指で指し示す方が好ましいと思います。
弓を指し棒にするのは好ましくない
オネジを必要以上に素早く回して弓の毛を張っているケースを見かけることもありますが、弓にとっては好ましいことではありません。不適切にオネジを回すとオネジ自体を壊してしまうこともありますし、フロッグを傷めてしまうことがあります。オネジを回す時にはスティックを持つのではなく、フロッグを支えながら速すぎず回します。
弓の毛は手で触るべきではありません。手の脂がついて真っ黒になりますし、脂の付いた部分だけ弓が弦に引っかからなくなりますので、音色の悪化だけでなくあらぬ方向へスリップすることがしばしばあります。脂が付いても松脂を塗ることで音は出ますが、長い目で見るとトラブルを起こしやすくなるだろうと思います。
弓の毛は手で触るべきではない
自分の弓であればどのように扱おうと勝手ではあります。けれども他人の弓を借りたり、楽器店で弾かせてもらう場合に、普段の不適切な扱いが出てしまうものです(わたしも楽器店の方から不適切な扱いを注意された事があります)。ぜひ、マナーというレベルではなく常識と思って、楽器や弓を普段から大切に扱うようになさって頂きたいと思います。
※1 一応、折れても修理して使うことはできますが、価値的も大きなマイナスになり、性能的にも影響が出るとされます。
※2 幼児教育などで弓を振り回すことをやる場合もありますが、弓にとっては望ましいことではありません。