弾ける人ほど読んで欲しい本
そこそこに弾けるようになってくると、速いパッセージを弾く技術だけがヴァイオリンの技能と勘違いすることが少なくありません。ヴァイオリンを上手に弾くというのは、「速いパッセージを間違えずに弾ける」という能力ではありません。
どれだけ弾けるようになっても、時々、立ち止まって、自分のやっていることを見つめ直すことは、必要なことではないかと思います。見つめ直す時に、多くを考えさせてくれる本を2冊ご紹介します。
決して、ハウツーではありません。ですが、考えるヒントになるという点では、お勧めできます。
奏法の哲学 鈴木鎮一 1999 全音楽譜出版社
鈴木鎮一氏はスズキメソード(才能教育)の創始者として有名な人です。スズキメソードは、演奏方法の古さ、読譜の問題など批判の対象になることも少なくありませんが、日本のヴァイオリン教育の中で重要なもののひとつでしょう。
本質的にスズキメソードはヴァイオリン演奏家養成の教育ではないのですが、この本を読むと、ついつい忘れがちな演奏のポイントが数多く記されていることが分かります。
そのまま鵜呑みにすれば良いわけではありません。あくまでも考えるためのヒントと捉えるべきでしょう。
この本は1960年に出版された本の復刻版ですが、現代でも充分に通用します。弾ける人ほど読んで欲しいし、教える人なら必ず読むべきでしょう。
わたしはスズキメソードに与するわけではありませんが、鈴木鎮一氏の演奏哲学には、大変共感します。演奏や指導に悩むときにはぜひ手にとって頂きたい本です。
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→奏法の哲学 鈴木鎮一
ヴァイオリンを愛する友へ メニューイン 1987 音楽之友社
メニューインは20世紀前半に主に活躍したヴァイオリニストです。文字通りの「神童」でしたが、大人になってからは、良い演奏ができなくなってしまったヴァイオリニストでもあります。
本能的に弾けなくなってしまったため、徹底的に自分の演奏を見直し、研究をし、その上、音楽とは何かということを考え、語り続けた人です。そのエッセンスがこの本には記されています。
残念ながら、メニューイン自身はその努力の成果が演奏には現れませんでしたが、音楽とは、演奏とは、ということを考える際のヒントになる本です。
ヨガについては、試していないし、よく分からないのが率直な印象で、お勧めもしがたいのですが、その他の部分は大変にお勧めです。
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