ヴァイオリンは手ではなく身体で弾く
ヴァイオリンは手で弾くものではありません。身体で弾くものです。
「心で弾くもんじゃ」といった難解なことを言っているわけではありません。「指先よりは手のひら」、「手のひらよりは腕」、「腕よりは上腕」、「上腕よりは背中」、「背中よりは身体の中心」と考えて弾いてみてはいかがでしょう?ということです※1。
「身体の中心から動かす」と考えると、右手も左手も解決できる技術は多くあります。音色はもちろん、ヴィブラート、シフティング、スピッカート、アップボウ・スタッカートなどもかなりの部分は解決できます。また、「手で弾く」ことに起因する身体の故障も減らすことができます。
特に音色面についてお話しします。
「ヴァイオリンは手で弾く」とあまりにも思われているため、プロを含めて多くの方が貧弱な音で弾いてしまっているようです※2。指は回っても、充分に鳴っている音で弾けている人はほとんどいません。これではヴァイオリンを弾いていることにはならないし、楽器選びも間違ったものを選んでしまうことになります。正しい方向に進むためには「良い音」は全てに優先すべきです。
そして「良い音」というのは「弦を充分に振動させること」と「弦の振動をじゃましない」ことに尽きます。「弦を充分に振動させること」「弦の振動をじゃましない」という感覚は、肉を包丁で切るのに似た感覚です。手先の力だけではできないし、腕力だけでもうまく切れません。手先でもなく、腕力でもなくのちょうど良いバランスで弓を動かすことが、良い音を出す条件です。
右手も左手も「身体の中心」を意識して弾いてみてはいかがでしょうか?
良い音で弾く、また、身体を壊さないための参考になれば幸いです。
※1 レッスンにお出でになった方で音色に問題のある方に「背中から弓を動かしてみては」とご提案差し上げると、全員が明らかに充実した音で弾けるようになります(お出でになった皆様有難うございます。「背中から」というのは忘れないで下さいね)。
※2 「ヴァイオリンの音色」にも考え方に違いがあるようですが、ヴァイオリンの音は本来、きれいな静かな音というよりは、非常に存在感のある音です。楽器のランクが上がるほど、軽自動車の排気音から、アメ車の排気音のような音になると言えばいいでしょうか。
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