先生への絶対的信頼は不要 - レイトとアーリー8
子供にヴァイオリンを習わせるときは、絶対的に先生を信用させた方が良いと思います。そうでなければ言われた通りのことを長年続けることは不可能でしょう。
ですが、大人の場合は先生を絶対的に信用する必要はないと思います。わたし自身教えている立場ですが、お話ししたことを忠実に実行するのではなく、お話は弾き方を工夫するためのヒントにして頂きたいと思っています。
先生も書籍も必ずしも正しいことを言っているわけではありません。指弓など名演奏家がやっていない演奏方法が「正統な弾き方」のように教えられているし、100年前の弓の持ち方や弾き方が今でも書籍に書いてあります※1。それは、「ウサギ跳び」や「スポーツ時に水を飲むな」のような「過去の誤った弾き方・指導法」です。
残念ながら、こういった「過去の誤った弾き方・指導法」が非常に多く流通しています。また、教育の場では「質問するな。言われた通りやれ」という雰囲気があります。しかし、少なくともわたしは他の先生と違うこと(でも、名演奏家はそうしている)を多く言いますし、欧米の教育と同じく、疑問を持ったその都度質問を頂きたいと考えています。
わたしだって正しいことを言っているとは限りません。多くの手段で、正しい弾き方を研究してはいますが正しいという保証はありません。「正しい保証」がないからこそ疑問を持って頂いていいし、疑問を教える側にぶつけて頂きたいと思います※2。
わたしの方のアイディアは、しつこく・実際にできるまでお伝えしているつもりです。また、弾き手にはわからない場合があるので録音を推奨していますし、DVDなどで名演奏家と比較することも推奨しています。そして、社会的に対等な立場として質問頂くことを期待しています。
「先生を盲目的に信頼してついていけば、いつか道は開ける」ということは絶対にありません。どんな高名な先生の言うことでも、それでうまく弾けるようになれば良いし、結果が悪ければダメです。ぜひ、教わったことは良い音・美しい音楽をつくるためのヒントとして「利用」して頂きたいと思います。
※1 これらの弾き方では良い音は出ません。楽器がきちんと鳴らないから表現はつくれませんし、また、雑音感が強いから音程も合いません。
※2 質問は「わからないから」ではなく「よく考えているから」できるものです。また、質問をできるからこそ個人レッスンの意味があります。
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