持ち方・構え方1 - ヴァイオリンの技術を考える
長年ヴァイオリンを弾いていても、「右手にヴァイオリン」「左手に弓」、と左右反対にして持つと、ヴァイオリンを支えることすら困難とよくわかります。ヴァイオリンを始めたばかりの方は大変な苦労と苦痛を感じているかと思います。
「左手を離してもヴァイオリンが下がらないように」「ヴァイオリンをあごで支えるように」と指導されることが多いようです。「ヴァイオリンはあごで支える」というのは、少なくとも日本では常識のようにされていることですが、本当に合理的でしょうか?
わたしは非合理的と思います。メリットに比べ、デメリットがあまりに多いのです。
ヴァイオリンをあごで支えるメリットは左手がフリーになることです。特にシフト(ポジション移動)をする時の抵抗が少なくなるため、より素早くシフトができ、速いパッセージを弾く上では有利になります。
一方、デメリットは多くあります。あごや首に負担がかかること、スクロール側が下がりがちになること、弓の圧力を充分に支えられないこと※1、が容易に思い当たります。「身体の故障」や「変な持ち方」、「変な音」の原因として思い当たるフシがあります。
あごでがっちりと支えるのはむしろオプションで、基本的には、肩と左手の間をヴァイオリンで橋渡しして、楽器が動かない程度にあごで支えるもの、と考えた方が良いのではないでしょうか?左手を離してもヴァイオリンが水平でなければならないというのは、やはり不自然に思えます。
左手でネックを握る必要はありませんし、親指と他の指で挟む必要もありません。親指で少しだけネックを持ち上げるだけで充分です※2。それだけで、上半身の力を抜きやすくなるし、しっかり弓の圧力もかかるし、ヴァイオリンをほぼ水平に持つことができるようなります。楽器を持つことに関する問題の多くを解決できるように思えます。
議論はあると思いますが※3、左手も使って楽器を支えることがデフォルト、あごで支えるのはオプションと考えてみてはいかがでしょうか?楽器を楽に持つヒントになれば幸いです。
※1 弓の圧力は、楽器からの反力があって、弦にかかります。楽器を弓に押しつけるようにすることで、しっかりした音が出ることが多いようです。
※2 パールマンなどのように、ネックの真下に親指を置いて楽器を支えている状態が参考になります。シフトはネックの上を這うようにして行うことになります。
※3 興味のある方はメニューインやガラミアン、ヴィオラのプリムローズの書籍などもご覧になってみてください。
→メニューイン「ヴァイオリン奏法」
→ガラミアン「ヴァイオリン奏法と指導の原理」
→プリムローズ「ヴィオラ奏法」
←Back Next→
始め方がわかる
トップ
(C)Caprice