ユ−ディ−メニュ−イン・カ−ティス W デ−ヴィス メニューヒンが語る人間と音楽 |
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基礎情報
著者・編者 |
ユ−ディ−メニュ−イン・カ−ティス W デ−ヴィス |
訳者 |
別宮貞徳 |
題名 |
メニューヒンが語る人間と音楽 |
出版社 |
日本放送出版協会 |
価格 |
3,150円 |
ISBN |
4140083301 |
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表紙写真
目次
- 音の息吹
先史時代からシュメール、エジプト、中国の大文明、そして古代ギリシアに至る音楽の起源を検討する。 人類は骨、角、柳の樹皮、動物の腸など自然の中に見いだした物や、弓矢、鉄、青銅など自ら作り出した物から、楽器を創造した。聴覚の進化について述べ、倍音の原理の利用を考察する。
- 花開くハーモニー
初期キリスト教聖歌のいわゆる単旋律聖歌から、豊かに噴出したルネサンス音楽までの西欧音楽の成長をたどる。ムーア人とキリスト教徒はスペインの領有をめぐって争い、十字軍が送り出され、異文化の衝突をひき起こす。音楽は多声部を融合したものとなり、和声の原理が確立し、管弦楽法が生まれ、記譜法はネウマという大まかなものから譜表と音符を使う今日の方式に発展する。
- 新しい声、新しい音
モンテヴェルディはオペラを生み出し、コレルリはソナタとコンチェルトを生み出す。そして、ヴェネチアの町は、ルネサンスがバロック時代にむかうにつれて、音楽の都となる。アフリカと新大陸の植民地化が始まる。ヴァイオリンの製作は、ストラディヴァリとグァルネリの手によってクレモナで完全の域に達する。勢力は次第に北方へと移り、リュリがルイ十四世の楽長となる。またヘンリー・パーセルは、イギリスのルネサンスの大家たちの最後を飾り、その影響はドイツ人であるヘンデルによって受けつがれる。
- 作曲家の時代
ヴィヴァルディ、バッハ、モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルトなどが、ヨーロッパの誰もが楽しめる音楽の形式を確立する。名作、大作の作曲がはじまるが、こうした作品は、今日の演奏会でも依然支配的な位置を占めている。バッハは、平均率を確立し、対位法を完成した。モーツァルトは、最高の優雅と慎みを持って人間の感情を語る。ベートーヴェンは、作曲家とは自分自身の作風の創造者であるといい、シューベルトは、うちなる心に呼びかける。
- 個性の時代
工業の発達に伴い、近代的なグランド・ピアノ、大編成のオーケストラ、大規模なグランド・オペラが出現。パガニーニ、ショパン、リストはロマン派のヴィルトゥオーゾの代表となる。都市が発達し、ポピュラー音楽、民族音楽は次第に洗練されていく。国歌が制定される。ヴェルディは、台頭するイタリアの文化の面でのヒーローとなり、ヴァーグナーは、西欧音楽のよりどころを断ち切る。チャイコフスキーその他の作曲家の作品の中にも、フラメンコなどのポピュラー音楽の中にも、民族主義が織り込まれる。ブラームスは民族的要素とのふれあいを保ち、シュトラウスのワルツがヨーロッパ全土を風靡する。
- さまざまな道へ
自らの意志でヨーロッパから、また、心ならずもアフリカから渡ってきた人々が北アメリカの住人となり、そこから新しい音楽の胎動が聞こえる。スティーヴン・フォスターの歌曲、スコット・ジョプリンのラグタイム、ジョン・フィリップ・スーザの行進曲は、育ちゆくアメリカの重要な一部分である。 エジソンによる映画と蓄音機の発明が人々の音楽の聴き方、好みを大きく変えていく。ヨーロッパでは、ドビュッシーの印象主義、シュトラウス、マーラーの壮大な音楽の出現により、旧来の慣習が崩れ去る。チャールズ・アイヴズに来たるべき変革の兆しが見え、イーゴリ・ストラヴィンスキーの「春の祭典」は音楽に革命をもたらす。
- 未知の世界へ
二十世紀にはいると、生活のテンポはますます早まり、音楽も目覚ましい勢いで新しい要素を吸収していった。ジャズは津波のように世間を席捲し、ジョージ・ガーシュインによってコンサート・ホールでも演奏されるようになった。アルノルト・シェーンベルクは十二音技法をあみだし、エドガー・ヴァーレーズは従来の作法に全くとらわれない抽象音楽を創り上げた。一方、エーロン・コープランドは、ヨーロッパ諸国に比肩しうるアメリカ独自の音楽を打ち立てた。ビッグ・バンドの時代は、ハリウッドとストコフスキーの、また、ラジオとトスカニーニの活躍した時代でもあった。バリ島の音楽が新たに見直されるようにもなった。そして、アルバン・ベルクは、最後の作品、ヴァイオリン協奏曲によって過去を集大成し、同時に過去の伝統を振り捨てた。
- 音とは何か
ガラクタの山か、堆肥の山か、それが問題だ。音楽は迷子になったのか、それとももう一度花を咲かせるのか。ジョン・ケージは音楽の有効性そのものを問い直し、スティーブ・ライヒは音楽をプロセスとしてとらえる。一方バッググラウンド・ミュージックとして聞き流されるとき、音楽は意識下の埋め草となる。技術革新は音楽の作り方や大衆への伝え方を一変させた。カナダのピアニスト、グレン・グールドは録音が演奏会に取って代わったと主張する。ポピュラー音楽も、シナトラの甘いバラードからプレスリーの激しいリズムへ、ビートルズのほとばしる感情の歌からローリング・ストーンズの都会の荒々しさへと姿を変えてきた。そしていま、若者たちは古い時代の音楽や異文化の音楽を再発見し始め、古典、ポピュラーの別なく情感が本来の役割を取り戻しつつある。ベーラ・バルトークは芸術家の姿勢をあくまで貫きながら、しかも大地と人間に根ざす自らの原点を決して見失わない。
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