ここ3ヶ月ほど、この「楽器店の選び方」シリーズの取材と準備をしていました。そんなところにヴァイオリン@ウェブさんの掲示板で「ヴァイオリンを楽器店に壊された」という記事が投稿されました。被害にあった当事者の方には全く罪の無いことだけにお見舞いを申し上げるばかりです。
残念ながら「楽器を職人に壊された」という話はヴァイオリンの世界では珍しくありません。私自身も、とあるお店で弓のフロッグを割られたことも、また別のお店で音の調整をおかしくされたこともあります。また、楽器に被害はなかったものの嫌な思いをさせられたことも数多くあります。
そんな経緯もあって、また、仕事上の必然性もあって、現在では自分なりに「楽器店の選び方」の法則性を持っています。それを少しずつお話ししていこうと思います※。
今回は大原則をお話しします。
「ヴァイオリンを直すのも壊すのも、価値を与えるのも奪うのも楽器店である」ということです。
職人さんは楽器の修理等を行っているわけですが、自信を持って破壊していることもあります。楽器に取り返しがつかないほど大きな損傷を加えるのは、ヴァイオリンのユーザーではなく職人さんということも多いのです。トドメを刺すことも多いという意味で、医者と患者の関係と似ていると言えます。
また、楽器を販売する際には楽器店が値段を付けます。楽器店が確かな目を持っていれば、楽器に適切な値段を付けることができるし、見る目がなければ適切な値付けができません。また、楽器を見る目がなければ修理の際にストラディヴァリを見習いが修理することも起こりえます。
ストラディヴァリの偽物の話は多くありますが、逆に本物のストラディヴァリを安物と見なされてしまえば、ユーザーにも職人さんやディーラーにも丁寧な扱いはされなくなるなるでしょう。偽物を本物と扱われるのも問題ですが、むしろ格上に見なされるより、格下に見なされる方が損失は大きいのではないでしょうか?
大袈裟な言い方かもしれませんが、一種の「社会的責任」「文化の保全・保護」を担っているのが楽器店となるわけです。それを楽器店がどこまで意識して実践しているかが「楽器店の選び方」のキーポイントになると私は考えます。
次回以降細かくお話ししていくことにします。良い楽器店で良い楽器に出会うための参考にして頂ければ幸いです。
※なお、メールなどで「具体的にお勧めの楽器店名を教えて」といった質問はなさらないで下さい。安易に結果だけ求めるような姿勢に私は共感しません。レッスンにお出でになった方には音を担保する責任があるため、聞いて頂けばお教えしています。
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