最近は肩当ての使用が一般的です。左手の自由度が高くなることは事実ですし、肩当ての種類・材質でも音色は変わります。「肩当てを使うな!」と言っているわけでも「肩当てを使わない方が良い!」と言っているわけでもありません。
ですが、肩当て無しで弾くことを時間をかけて試してみて欲しいと思います。特に、よく弾ける方や指導をなさっている方には「ぜひ」と申し上げたいと思います。
私自身そうでしたが、肩当てを使用してきた者にとって肩当て無しで弾くというのは大変な苦痛です。楽器は滑る、シフティングやヴィブラートはうまくできない、鎖骨が擦れて痛くなるなど、とても弾けるものではありません。
ですが、私の場合、肩当て無しでパガニーニのカプリースをほぼ全曲1年間練習したら、何ともなくなりました。時間はかかりましたが、やってみればできるようになるものです。現在、私はアッシュ材のマッハワンを使用するか肩当て無しで弾きますが、「肩当て無しで練習した」ことから多くのことが分かるようになりました。
最も得たことを「正しい弾き方に近づいた」ということです※。肩当て無しでは、力で弾くことはできません。胸とあごで力任せに支えることはできないし、楽器の向きも限定されます。これまでシフティングやヴィブラートもあごで楽器を押さえつけていたから、できていたに過ぎないことにも気付かされます。裏板の振動も意識するようになります。
これらのことに気がついた上で、巨匠の映像や写真を参考にしたり発言を読んだり、機会あるときにストラディヴァリなどの名器、あるいはトルテなどの名弓を弾かせて頂いたりしました。すると、ヴァイオリニストの発言や演奏フォーム、楽器の響きに納得できる面が発見できるのです。
「肩当てを使わないと弾けない」のと「肩当てを使わないでも弾けるけど、使う」というのでは、大きな差があります。3ヶ月だけ我慢してみて下さい。よく弾ける方ほどいろんなことが分かるようになるはずです。
※何をもって「正しい」とするかは難しいのですが、私は「楽器(特に名器)を鳴らせる」「名演奏家の音に近づく」というのが「正しい」ことの基準のひとつと考えています。もちろん、全て分かっているわけではありません。
※あご当てまで外すこともやりましたが、明らかに楽器を傷めるし有益でもありませんでした。
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