教師が無意味な指導をしている場合があります。教師自身がそれに気づかないことも多いし、わたし自身かつては無意味な指導もしていたと今になって気づきます。
他人の演奏にケチをつけるのは専門知識がなくてもできます。また、自分で弾けることと、他人を弾けるようにすることは別問題です。「どうやったらできるようになるか」を伝えることは、演奏とは別の専門知識と多くの経験が必要になります。そこが教師の仕事です。
典型的な無意味な指導について書いてみます。教師の指導の質を判断に、下記のような言葉に注目してみてはいかがでしょう?
【練習しましょう、練習しなさい】
頻繁に使用される言葉ですが、指導者にとってとても便利なため無神経に使ってしまうことの多い言葉でもあります。「〜という点に注意して練習しなさい」という指導なら良いのですが、単に「練習しなさい」では指導になりません。
いくら練習をしても、練習方法が間違っていれば絶対に上達しません。教師の役目は「弾き方」「練習の方法」を伝えることであって、単に「練習しなさい」ではむしろ下手になります。「回数と時間をかけて練習すれば自動的に上達する」と指導者が思っているのなら、その指導者は無能です※。
【頑張りましょう、一生懸命に】
頑張ったって、一生懸命弾いたって、できないものはできません。新しい曲や技術を習得するには、ある程度「頑張る」必要はあります。ですが、曲や技術のクオリティを上げるためには「頑張らない」ことが望ましいと言えます。
曲を弾かせることや練習をさせることが教師の役目ではありません。音楽や音のクオリティを上げることに教師の専門知識が生かされます。「頑張る」と音は悪くなるし、雑な練習になりがちになります。むしろ、逆に「ゆるゆると」「そんなに頑張らないで」の方が上達するとわたしは考えています。
【丁寧に、心を込めて】
丁寧に弾いても、心を込めてもうまく弾けるわけではありません。楽譜に書いてある通りの音程と、音の長さで弾くことが「丁寧に」の意味かとも思いますし、頭の中で歌うことが「心を込めて」の意味かとも思いますが、曖昧です。
弾き方の説明なしに「丁寧に」「心を込めて」では上手にはなりません。こういった漠然とした表現はあまり良い指導ではない、とわたしは考え言葉を注意して選んでいます。
※もちろん、上達には練習が不可欠ですが、単に「練習しなさい」では間違った方向の練習をしがちになります。教室の中で、同じようにやっているのに生徒さんによって大きな差が出ることが多いのは、「練習方法の指導」をしていないためと思います。
←前の記事「個人レッスンとグループレッスン:ヴァイオリン教師という仕事9」を読む
→次の記事「最小限の費用でヴァイオリンを楽しむ1」を読む
→ 一覧ページに戻る → トップページに戻る
|