うまく弾けるようになる、というのはどういうことでしょう?わたしはお部屋の片付けに似ていると考えています。
始めたばかりの段階は少しずつ物を買い集めていくのと似ています。買ったものがその都度整理整頓できていれば問題ないのですが、多くの場合は雑然としてきてしまいます。また、整理整頓してもしばらく経つと散らかってくることも多いでしょう。
経験があるけれど上手く弾けない状態は、床一面に物が散乱している状態に似ます。どこから手を付けたらよいか分からない場合もありますが、とりあえず片付けを始めないとこれまで買った物が使えないし、新しく物を買うこともできません。
まず、片付けのプランを考える必要があります。本棚は壁の方に、ペン立ては机の上に、と常識的な範囲で片付けの設計をします。そのためには、常識的な配置を知っておく必要があります。これはヴァイオリン演奏のCDを聴いたりDVDを観たりして、常識的な音色や弾き方を知るプロセスに当たります。
片付けを始めても、ひとつひとつにラベルを貼ったり、本を読み始めたりすると片付けは進みません。とりあえず本は本棚に突っ込む、ボールペンは鉛筆立てに、と大雑把に片付けます。これが、弓の大雑把な持ち方、弓をまっすぐに動かす、ヴァイオリンを持つ位置関係・・・といった基礎技術の基本的ルールに当たります。ここをきちんとするだけでもだいぶ片付きます。
大雑把に片付けたら、本棚の並び順を使いやすく整えることができます。アイウエオ順や、分野で分類するなどとクオリティを上げます。これが、音色の改善であったり、スムーズなシフティングであったりします。最初から細部にこだわり過ぎると、いつまで経っても部屋は片付きません。
いろんなものが片付いて、本棚やペン立てなどの整理ができると、部屋全体として整った印象になります。もとのプランが良ければこれでほぼ完成します。逆に、もとのプランが甘いと、部屋の中央に本棚を置いていたり、上下逆さまに机を使っていたりと理解に苦しむ部屋ができてしまいます。
整った部屋に花を飾ったり、絵を掛けたりすればより素敵になります。これがルバートやポルタメントといった表現です。
片付けることなく、いきなり表現をしようとしても良い結果にはなりません。練習方法がわからなくなったときは、お部屋の片付けをイメージしてみるとすっきりしてくるのではと思います。考え方のご参考にしていただければ幸いです。
※レッスンをする時は上記のようなイメージをわたしは持っています。あまりにも散らかっている場合は大雑把に全体を整理して頂き、そこから細部をリファインするためのアイディアをお伝えします。また、充分整理できていれば整理方法を変えさせる必要はなく、どんな花を飾るかを提案するだけの場合もあります。
指導者が自分で片付けるのではなく、片付け方・片付けるアイディアをお伝えするというのが大人に対する指導と考えています。全く整理できていないのに「どんな花を飾ろうか一緒に考えよう」と言っても無意味ですし、まして、怒っても片付かないでしょう。
←前の記事「先生への絶対的信頼は不要 - レイトとアーリー8」を読む
→次の記事「収入の実態:ヴァイオリン教師という仕事1」を読む
→ 一覧ページに戻る → トップページに戻る
|