ヴァイオリンや弓に力をかけ続けたり、過度な力をかけたりすることは、楽器のトラブルを招きます。そのため、保管時にも弓の毛や弦の張りに気を配る必要があります。
弓の毛の張りは、弓の端のネジを回すことで調整できます。使用後は「弓の毛がスティックに軽く触れる、しかし、弓の毛の束がばらけない」程度に緩めます。
弓の毛を緩める理由は、スティックの反りを保つことにあります。スティックは熱をかけて曲げてあり、弓の毛を張ったままにして力をかけ続けていると、反りが戻ってしまいます。使用後には必ず弓の毛を緩めるべきです。
使用後に弦を緩めるか、緩めないかについては、議論があります。わたしは次のように考えています※1。
緩める方がよい場合:
・
3日以上弾かない
・
ガット弦を使用、かつ、湿度の高い環境で弾いた
緩める必要が無い場合:
・毎日 or 2日に1度程度は弾く
ガット弦と湿度が関係するのは、ガットが湿度で伸縮するためです※2。緩める加減は、長期間弾かない場合は5音程度、湿度の高いときに弾き翌日も弾く場合は1音程度緩めれば良いと思います※3。
張力をかけ続けたり、かけ過ぎることによるトラブルとしては、ネックが手前に曲がってくる(「ネックが下がる」と言います)ことが代表的です※4。この修理(「ネック上げ」という修理になります)には高い費用と時間がかかってしまいます。
弓や弦の張りを緩める理由は、「同じ力をかけ続けることを避ける」「過度な力をかけることを避ける」事にあります。緩める理由に注意すれば、適度な加減を見つけやすくなるかと思います。ヴァイオリンや弓の取り扱いの参考になれば幸いです。
※1 新作やモダンの楽器なら通常これで良いでしょう。オールドには、緩めることで「楽器の疲労回復ができる」という現象が見られる場合があり、少々異なります。
※2 部屋とケースの湿度差がある場合、低い湿度では弦が収縮し、張りが強くなります。そのため、楽器に過度な圧力がかかります。
※3 緩め過ぎると駒や魂柱が倒れやすくなるので、緩め過ぎには注意する必要があります。
※4 ネック下がり防止用パッドについては、わたしは効果に疑問を持ちますし、表板に悪影響を与えるように思えます。
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