名器の響き ヴァイオリンの歴史的名器


入手困難のためご紹介したくてもできないCDがいくつかあります。今回の「名器の響き ヴァイオリンの歴史的名器」もそのひとつで、最近再販されたためご紹介できるようになりました。

ストラディヴァリ、グァルネリ・デル・ジェス、アマティなど名器を弾き比べたCDはいくつか存在します。有名なのはルジェロ・リッチが弾く「The Glory of Cremona」ですし、「What about this, Mr. Paganini?」というものや、図鑑とセットになった「The Miracle Makers」というものもあります。ですが、ルジェロ・リッチのは演奏のアクが強すぎて楽器の音がよくわからないし、「What about this, Mr. Paganini?」は演奏が今ひとつ。「The Miracle Makers」は約3万円で高過ぎです。

その中で、これは名器がどうこうという以前に演奏が良い。奇をてらった演奏でもないし、やたらコントラストの強い演奏でも、バロック風になりすぎた演奏でもなく、非常にニュートラルかつ上品でプレーンなヴァイオリンの音です。「普通の演奏」、「普通に美しい音」というだけでも、充分お勧めできる演奏です。

使用楽器はストラディヴァリ 1716 Provigny、ストラディヴァリ 1724 Sarasate、ストラディヴァリ 1692 Longuet、ストラディヴァリ 1708 Davidoff、グァルネリ・デル・ジェス 1742(多分 Alard)、ニコラ・アマティ 1639でパリの楽器博物館所蔵のもの。

特筆すべきことはアマティ(これは1972年博物館入り)を除いて、1890年〜1910年あたりから博物館入りしている楽器と言うことです。すなわち、100年ほど前の状態を保った楽器の音ということです。写真を見ても、現在、コンサートで使用されている楽器より遙かに状態が良いし、音を聴いても、変に詰まったような音や尖ったような音ではなく、自然なのに何とも言えない良い音がします。

演奏者はピエール・アモイヤルで良い意味でのヨーロッパ的演奏、録音も変にエフェクトや響きをつけていない良い意味でのヨーロッパ的録音。

名器は博物館入りさせず演奏会に使うべきだという意見があります。一理あるとは思いますが、拝金主義の音楽業界や演奏家側の論理とも思えます。実際、そういう演奏家の音は強欲な音がします。このCDの音は100年前の状態を保った音でそれは無欲の音がします。この点も聴きどころでしょう。

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