修理・調整で全く音が変わります2


ストラディヴァリだからと言って、どのヴァイオリンも同じ音が出るわけではありません。個体差が意外なほどあります。

ヴァイオリンは製作時の個体差だけでなく、「今までの破損歴・修復歴」、「その楽器の性能を引き出す調整技術」が音に影響します。「素質」「修理・修復」「調整」のいずれも重要な音の要素なのです。

・「乾燥して割れたり、事故により破損した板 → ニカワとパッチで接着」
・「虫に食われたり、使うことで摩耗した部分 → 別の木で補う」
・「剥がれたニス → 別のニスで塗り直す」
・・・など、破損・摩滅と修理・修復を繰り返すたびに振動板の物理特性が変わり、その結果、音が変わっていきます。

後世の修理による振動特性の変化を最小限にし、ヴァイオリンの素質を最大限に引き出すことができれば、製作時に近い音が出ると考えられます。その素質を最大限に出すのが、修理・修復と調整の技術です。

古い自動車やバイクをレストアするのと似ています。現状では本来の性能は出ていなくても、損傷している箇所はオリジナルと同じ部品に取り替えて、オリジナルと同じ部品が入手不可能なら、近いものを作ります。これが「修理・修復」です。

修理・修復することで限りなく新車時に近づけることができれば、新車時の性能を出すことができるはずです。ですが、すべての部品が新車同様でも、タイヤの空気が充分でなければ性能を引き出すことはできません。タイヤの空気を適切に入れてやる作業が「調整」です。

どれが不足しても新車に近い走りはできません。

ヴァイオリンも同じで、製作時と同じ状態になるよう修理・修復し、さらに、修理・修復したヴァイオリンの性能を引き出すように調整した結果の音が、私たちの聞く音なのです。

楽器の音と、「修理・修復」、「調整」は切り離せない要素です。必ずしもブランド(製作家の名前)だけで「良い音」が保証されるわけではありません。
ヴァイオリンを選ぶ際の参考になれば幸いです。
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