ロングトーンを弾くために:筆と考えて


短い音よりも長い音(ロングトーン)を弾く方が、難しい技術です。ヴァイオリンの音は最初から最後まで同じ音で弾くことが原則です。従って、弦に対して一定に力を加え続けなければならず、すなわち、弓元から先まで一定の速さで、一定の圧力で、弾く必要があります。

この「一定に力を与え続ける」のが難しいし、スラーの場合はここに左指の動きが入ってくるため、安定した運弓はより難しくなります。

ロングトーンを弾く感じは習字の筆で「一」の字を書くのと似ています。筆を紙に置き、にじまないうちに、均一の速さで横に動かします。筆が遅過ぎればにじみ、筆が速過ぎればかすれ、途中で速さが変われば、太さが変わります。手先だけ動かしても、まっすぐに書けないし、筆の持ち方が強すぎれば震え、弱すぎれば紙との摩擦に負けてしまいます。

この感じとかなり近い。弓は弦との抵抗に耐えきれる程度には持ちますが、強過ぎる必要はありません。手先や肘の動きだけではまっすぐに動きませんので、腕全体を使って(もちろん肘の関節も動きます)動かします。

筆の毛がそれなりにしなるのと同様に、弓と弦を少ししならせて置き、弓の毛で弦を真横に引っ張るようにして、やや思い切って動かします。ゴリゴリッと音がするときは、引っ張る速さが遅すぎるか、圧力が強すぎます。

ロングトーンの練習に関しては、まず四分音符=60の全音符(4秒程度)がきれいにできるようになれば多くの曲では大丈夫です。30秒や60秒できると自慢する方がいますが、その技術が必要な曲はほとんどないし、出来たって大したメリットもありません。

ロングトーンの練習の参考にして頂ければ幸いです。

←Back Next→
ヴァイオリン演奏のヒント
トップ

(C)Caprice