弓の持ち方1 - ヴァイオリンの技術を考える



しばらく演奏のテクニックについて、テクニックの意味・本質についてお話ししようと思います。

「ああしなさい」「こうしなさい」と言うのは簡単ですし、書籍やWebなどの情報も豊富です。ですが、 「その理由」の説明はなかなか見当たりません。テクニックの型を知っていても、意味・本質を知らなければテクニックを使いこなせないし、自分で上達できるようにはなりません。

そこで、わたしなりにテクニックの意味・本質をお話ししていきたいと思います。上手く弾くためのヒントになれば幸いです。今回は「弓の持ち方」についてお話しします。

弓はスティックを親指とその他の指で、指先でつまむようにして持ちます※。棒を握る常識的な感覚からしてみれば、弓の持ち方は「変な」持ち方です。「変な」持ち方をする理由は、「腕からの運動エネルギーを弦に伝えつつ、弦の振動を止めない」という矛盾した要求にあります。

腕?手?弓?弦の順序でエネルギーは伝わります。単純に考えて、途中の損失が少ない方が効率よく腕の動きが音に変換されると言えます。その点では、腕・手・弓・弦が一体になっていた方が望ましいと言えます。

ですが、効率よく音に変換されても、音を止めてしまっては意味がありません。ヴァイオリンの演奏時には弓の毛が弦に触れているため、弓の毛で弦を押さえすぎると弦の振動を止めてしまいます。美しい音を出すためにはできる限り弦の振動を止めないことが望ましく、弦の振動を止めないためには腕・手・弓・弦は独立していることが理想です。

「弦にエネルギーを与えつつ、弦の振動を止めない」
「腕・手・弓・弦が一体でありながら、独立していなければならない」

この矛盾した要求を満たさなければならないのが弓の持ち方・弾き方で、ここに難しさの本質があります。次回、具体的に持ち方の流派などを交えたお話ししますが、まずは、この矛盾した要求について、音を出しながら、弦の動きを見ながら考えてみてください。

※写真は書籍やCD等を参考にして頂きたいのですが、体格によって見え方がかなり変わるためいろんな演奏家の写真を見るようにして下さい。
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