音階練習はスラーを付けて弾く事が常識のように思われている面があるかと思います。速いテンポで1小節単位などの長いスラーを付けて弾くのが音階練習のイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
ですが、理想的にはスラーだけでなくスピッカートやリズムを変えたものなど、あらゆるパターンを使って音階練習も進めるべきです。またテンポも速いテンポだけでなく意識的に遅いテンポでも進めると有用です。
テンポについては別途書かせて頂きます。ここではスラーやリズムなどの右手のことについて記したいと思います。
初めて音階練習に取り組む時に、最初から指定のスラーで弾くのは負担が大きくなります。ポジション移動や音程など左手のことだけでなく、移弦や所定の回数で弓を返す右手のこと、の両方へ注意が必要で難易度が増します。初めてその音階に取り組む時は、まずはスラーを付けず一音ずつ弓を返して進めると左手の問題に集中しやすくなります。その上でスラーをつけると比較的スムーズに進められると思います。
比較的単純なボーイングで充分弾けるようになったら、更に一段上での段階で練習する事をお勧めします。
音階は曲で使うための「道具」であるというお話はしましたが、その目的には異なったリズムやスピッカートなど異なったボーイングのパターンでも練習するのが好ましいでしょう。カール・フレッシュの音階のリズムの付け方を参考に音階練習をすると、より曲の中で使い得る練習になるかと思います※。例えば付点のリズムが多数出てくる曲を練習している場合は、付点での音階練習も行う事は有用かと思います。
音階練習は音程だけでなく音色も音楽的に弾く必要があります。音階練習でE線の高い音を出そうとして音がつぶれてしまうケースが多々あります。特にスラーで弾く場合は、駒からの距離や弓の配分に注意して良い音で弾けるように練習するべきです。
ともすれば音階練習は目的を見失いがちな練習ですが、使える「道具」を磨き上げる作業であるべきです。そのご参考になればと思います。
※リズムや弓順を変えた練習はカイザーの1番やクロイツェルの2番、セブシックの29番でもよく行われますが、音階ではまた別の難しさが出てきます。