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SPレコードというものが大昔にはあった。LPになる前のレコードで戦前の「割れるレコード」のこと。これをSP用の良い再生装置(アンプの入っていないアコースティックの蓄音機)で聴かせて頂く機会に恵まれた。
聴かせて頂いたのはカザルスのソロ、それからティボーのソロ。
思ったより音量があり、生の音を聴いているのと同じ音量。何よりも音が美しく驚くほど生々しい。ティボーが文字通り目の前で弾いているようで、何とも言えない良い音色。これがあの「蠱惑の音色」かと納得がいった。
もちろんパチパチと雑音は多い。音のレンジも広くはないと思う。当然ステレオではなくモノラル。一曲分で片面があっという間に終わる。聴かせて頂いたのはゼンマイ式なのでしばらく再生すると遅くなる。欠点だらけといえば欠点だらけ。
けれども、そこに演奏者が居て楽器そのものの音が聞こえる感覚はこれまでどんなオーディオ機器でも感じたことがなかった。
テクノロジーの進化とともに音は確実に悪くなっているようだ。究極のオーディオはSPかもなあと思ってしまった。iTuneでのネット配信の時代に何というアナクロ(^^)。